保育の学び TFU教育フォーラム2015

こんにちは!

今回は、「TFU教育フォーラム2015 第二部 保育者対象分科会」についてご紹介します。

 

TFU教育フォーラム2015の第二部では、

「子どもの表現をみる、感じ入る、言葉に表す」をテーマに、ワークショップを行いました。

ワークでは、みんなで子どもの作品をみて、子どもの世界に入り、その作品の評価について想い想いの言葉で表現してみました。


卒業生の保育者の方々をはじめ、在学している大学や学年が異なる学生も含めてランダムに3~4人グループを編成したため、グループ内の人はみんな初対面。

ちょっと緊張したグループ構成で、「はじめまして」から始まりました。


◎基本レクチャー

ワークが始まる前にまず、青木先生から基本的な視点についてのお話をしていただきました。

以下で、重要な点をまとめて示していきます。


<ギャラリートーク>

ギャラリートーク(対話型鑑賞法)とは、初めにじっくりと作品を見せ、気が付いたことを発言させる方法を用いて鑑賞を進めていく手法です。参加者に対して、想像力を広げるような問いかけをしたり、見解に共感したりしながら、発言をどんどん促していきます。

いつの間にか一人一人は、積極的に見解を発言することで、自らが主人公になっていく。そして、他人の見解を聞き、その他人の見解について考え、「自分はそれについてこう思う」と発言したり、「私もその意見に共感する」と他人の意見に賛同したりしながら、作品の鑑賞を相互に深めていきます。

 

<コーチング理論>

コーチング理論の基本スキルは、【傾聴】・【承認】・【質問】です。

その中でも特にポイントとなるのが、【承認】です。

 

【承認】

承認(アクノレッジメント)とは…

・良いところを探す

・当たり前のことを認める

→ありのままを口に出すことの意味として、本人が気づいていないことをいち早く伝える役割を持つ。

 

Iメッセージ>

Iメッセージとは「私は~だと思う(感じる)」という伝え方のことです。

日頃、子どもたちは「~しなさい」など他者の価値観が入った言葉を浴びせられています。

そんななかで、Iメッセージは気持ちや意見を押し付けることなく、相手に伝えることができます。

日常で自分の気持ちや意見を伝える際に、この“I”が欠けていることがよくあります。

子どもの作品の評価を行う際にも、このIメッセージはとても重要であり、意識する必要があります。


<発達のドーナツ理論>

保育の場合、Iは子ども、YOUは大人(保育者)、そしてTHEYが世間や世の中ということになります。

子どもたちは身近な大人を通して、世の中を知っていきます。そのため、子どもたちが世の中と関わる際には、大人の援助が必要になってきます。




◎デモンストレーション

次に、デモンストレーションとして、臨床美術士の菅原さんに、実際に二つの絵を題材にギャラリートークをしていただきました。






その後、青木先生から今日の鑑賞のポイントとして、以下のことがあげられました。

 



 1.肯定的な言葉を用いる(不備を指摘することに良い意味は見いだせないため)

 2.できるだけ具体的に(作品を飛び越えて空虚な言葉にならないようにする)

 3.感情をのせる(説得力が増すため。言葉の意味が分からずとも伝わるため)

 4.同意を求める(対話による効果を得るため)

 

先ほどのIメッセージも組み合わせると、

   私は     ○○が   ~だからいいと思う

   (Iメッセージ) (具体的)    (肯定的)

となります。


◎ギャラリートーク

菅原さんのデモンストレーションや鑑賞のポイントを踏まえ、今度は各グループでギャラリートークを行いました。まず、それぞれのグループに三枚ずつパネルが配られました。それをランダムで1人ずつ選び、そのパネルに描かれた作品について、色や構成、物語性など鑑賞のポイントを踏まえながら、鑑賞をしました。

 

そして、作品から感じたことを一人一人付箋に書いて模造紙に貼り出していきました。

作品を見て自分が感じたことと、他人が感じたことにはいくつかの違いがあり、面白いと感じるとともに、少しモヤモヤした気持ちにもなりました。

 

また、パネルに描かれている子どもの意図や心情について、少しではあるものの、

理解できるようになってきたような気がします。


◎講評

一連のセッションを終え、最後に岩手県立大学・井上孝之先生からお話をいただきました。

以下、井上先生のお話(要約)です。

 

「今日の教育フォーラム、自分の思っていることを話して、すっきりしたとともに、もやもやしませんでしたか?

このもやもやした気持ちというのは、価値観が変わるときに生まれるものなので、とても大事なことなのです。

いい研修会ほど、もやもやします。しかしそれがいつか、すとんと納得できる日が来ます。

 

また、よく『子ども理解』といいますが、そもそも自分自身のことを理解できていますか?

自分のことでさえ理解するのは難しいのに、子どもを理解できるのでしょうか。             

子ども理解するうえで、必要なのが『感性』です。しかし、この『感性』は、身につけることがとても難しいです。

この教育フォーラムを通して『感性』のトレーニングができたのは、とても大きな経験だったのではないでしょうか。

 

また、保育における評価は、悪いところを直すのではなく、子ども一人一人の良さを引き出していくことが求められます。

『ほめる』はYOUメッセージ、『認める』はIメッセージであり、これらは同じものではありません。

ほめることは上から目線の言い方ですが、認めることは相手と対等な関係によるものです。

保育においても、子どもを認めるというIメッセージを心掛けることが大切です。

 

今回のこの会はとても有意義なものだったのではないでしょうか。」


井上先生、おまとめくださいましてありがとうございました。

 

 

以下は、第二部保育者対象分科会にご参加いただいた方々からのご感想です。

みなさま、ありがとうございました!

 

− 参加者アンケートより(一部抜粋) −

 

一般参加の方々

 

○I大学

 大学の枠をこえて、多くの意見を聞くことができて楽しかったです。

 内容も、初めての取り組みだったので興味深く参加することができました。

企画・運営してくださった方々、ありがとうございました。

 

○I大学 3年生

 他大学の人との交流はとても新鮮だった。他のグループの人たちとも話したかった。

 

本学卒業生の方々

 

○卒業生

 絵をじっくり見て語り合う機会が現場ではなかなかとれなかったので、同じグループの人と話すことでいろんな価値観に触れていい機会になりました。

 見方が膨らんだので、ぜひ現場ですぐ生かそうと思います。ありがとうございました。

 

○卒業生

 現場に出ていると時間に追われてしまい、子どもを褒める機会を減らしてしまっている。子ども一人ひとりと関わりを深め、自分は認められているのだと感じられる保育をしたいと思った。




学生(本学3年生)

 

○ 子どもの絵を見て鑑賞する難しさ、言葉で表現する難しさを感じた。それと同時に、他の人の見方を聞いて、新たな発見や気付きがたくさんあった。この気付きを大切にし、子どもと関わるときには活かして行きたいと思った。とても勉強になった。

 

○ 普段と違う環境(様々な年齢・鑑賞・雰囲気)の中で、様々な影響を受け考え合いながら学ぶことができた時間だった。鑑賞は今まであまり経験がなく、実践も少なかったため、今回このような機会を与えていただきポイントも教えていただきながら実践し、他者の考えにも触れることができたのはとても良かった。

 

○ 話し合いでは、自分の想像を超えた他者の意見を聞くことができ、とても勉強になった。子ども理解についても、子どもなりの考え方があって、形や色に細かく気を使って作品を作っているのだと感じた。保育者は子どものそのような姿を認めて関わっていくことが大切なのだと思った。

 

学生(本学2年生)

 

○ 実際に子どもたちの作品に触れ、先輩方とお話して、自分の価値観が揺らぎました。感性、心が豊かにさせられ、とてもいい時間を過ごすことができました。

 

○ 子ども理解と評価という題材でワールドカフェの形で子どもの作品への討論を行った。先輩たちや他大学との学生さんと話すことができてとてもよい経験になりました。子どもの作品を見てそれについて話し合う体験は初めてでとても頭を使いました。感性とかも磨かれてとてもいい経験になりました。

 

学生(本学1年生)

○ 違う学年の方とグループになり、意見を交換しました。私が思いつかなかった発想をたくさん出していて、すごいなと感じました。よい経験になりました。ありがとうございました。

 

○ 今日は先輩の方々に混ざって教育フォーラムに参加させていただいてとても有意義な時間を過ごすことが出来ました。子どもが書いた絵をこんなにもじっくり見るという機会が初めてだったのでとてもいい経験になりました。

 

 

以上、ぴよねっと2年の村上香純、佐藤大樹、伊藤春夫、澤田陸でした(*^^*)